2006年 06月 15日
三尖弁異形成、Ebstein奇形 |
三尖弁異形成(Dysplastic TA)は、三尖弁の高度の異形成により三尖弁逆流(TR)をきたす病態である。Ebstein奇形は、三尖弁の付着異常及び右室の菲薄化(ひはくか=薄くなること、少なくなること)により高度の三尖弁逆流をきたす病態であり、三尖弁異形成との違いは、三尖弁の付着異常があること及び右室心筋の菲薄化があることであるが、いずれも同様の血行動態・経過をとる。
右室に流入した血液は、高度の三尖弁逆流のため肺動脈へ拍出されず(機能的肺動脈閉鎖)右房へ逆流する。心房間交通(卵円孔)により右房から左房へ血液は流入する。左室から大動脈へ拍出された血液の一部は動脈管を経由して肺動脈へ流入する。
重症度は症例により大きく異なる。最重症例では胎児期に胎児水腫をきたし、胎児死亡する。重症例では出生までこぎつけるものの、胎児期に拡大した右房が肺の成長を妨げるため高度の肺低形成をきたし、新生児早期に呼吸不全により死亡する。呼吸不全が軽い症例でも、高度の三尖弁逆流により右房圧が上昇し、肝腫大、浮腫、腹水などの高度の右心不全症状をきたす。胸部X線写真ではいわゆる「wall to wall」と表現される著明な心拡大を示す。また、卵円孔、動脈管での右左短絡と肺血流現象により高度のチアノーゼをきたす。
治療にもかかわらず早期死亡する症例が多い。
出生後の呼吸循環管理で数日を乗り切れば、肺血管抵抗の低下とともに、右心不全、チアノーゼは改善する。
妊娠中期にすでに著明な心拡大をきたしている症例では、早晩、胎児水腫(皮下浮腫、腹水貯留、胸水貯留)から胎児死亡に至ることが多い。肺胸郭断面積比(CTAR)など肺低形成の有無に注意する。
新生児期に高度の循環不全を呈する症例は絶対的に予後不良である。最近、新生児期に三尖弁を外科的に閉鎖し、BT shuntを加える術式(Starnes法)が考案され、救命例が報告されるようになった。
胎児診断される心奇形のなかで、胎児期及び新生児期に死亡する可能性の高い最も予後不良の疾患である。家族への説明としては重症度の幅が大きいこと、胎児・新生児死亡する可能性があることを説明すべきである。特に妊娠中期にすでにwall to wallの心拡大を呈している症例では、家族への心理的サポートが最も大切である。また、出生直後から高度の呼吸不全をきたすので、出生前に産科、新生児科、小児循環器科のチームをつくり、綿密な打ち合わせと準備を行うべきである。
(「目でみる循環器病シリーズ 5 先天性心疾患 中澤誠編集 メジカルビュー社発行」より抜粋)
右室に流入した血液は、高度の三尖弁逆流のため肺動脈へ拍出されず(機能的肺動脈閉鎖)右房へ逆流する。心房間交通(卵円孔)により右房から左房へ血液は流入する。左室から大動脈へ拍出された血液の一部は動脈管を経由して肺動脈へ流入する。
重症度は症例により大きく異なる。最重症例では胎児期に胎児水腫をきたし、胎児死亡する。重症例では出生までこぎつけるものの、胎児期に拡大した右房が肺の成長を妨げるため高度の肺低形成をきたし、新生児早期に呼吸不全により死亡する。呼吸不全が軽い症例でも、高度の三尖弁逆流により右房圧が上昇し、肝腫大、浮腫、腹水などの高度の右心不全症状をきたす。胸部X線写真ではいわゆる「wall to wall」と表現される著明な心拡大を示す。また、卵円孔、動脈管での右左短絡と肺血流現象により高度のチアノーゼをきたす。
治療にもかかわらず早期死亡する症例が多い。
出生後の呼吸循環管理で数日を乗り切れば、肺血管抵抗の低下とともに、右心不全、チアノーゼは改善する。
妊娠中期にすでに著明な心拡大をきたしている症例では、早晩、胎児水腫(皮下浮腫、腹水貯留、胸水貯留)から胎児死亡に至ることが多い。肺胸郭断面積比(CTAR)など肺低形成の有無に注意する。
新生児期に高度の循環不全を呈する症例は絶対的に予後不良である。最近、新生児期に三尖弁を外科的に閉鎖し、BT shuntを加える術式(Starnes法)が考案され、救命例が報告されるようになった。
胎児診断される心奇形のなかで、胎児期及び新生児期に死亡する可能性の高い最も予後不良の疾患である。家族への説明としては重症度の幅が大きいこと、胎児・新生児死亡する可能性があることを説明すべきである。特に妊娠中期にすでにwall to wallの心拡大を呈している症例では、家族への心理的サポートが最も大切である。また、出生直後から高度の呼吸不全をきたすので、出生前に産科、新生児科、小児循環器科のチームをつくり、綿密な打ち合わせと準備を行うべきである。
(「目でみる循環器病シリーズ 5 先天性心疾患 中澤誠編集 メジカルビュー社発行」より抜粋)
by useradd
| 2006-06-15 04:54
| 用語の意味