2005年 10月 21日
インフォームドコンセント(35W0D) |
特急スーパーあずさで豊科まで行った。
豊科駅から病院までは3.2キロという案内であったので、試しに歩いてみた。
歩き始めてから気づいたのだが、歩行者が全然いない。
病院に着くまでに見た歩行者は、孫を散歩させているおばあちゃんだけであった。
移動手段に徒歩を使う人はいないようだ。(どこに行くにも遠いからか)
病院に着いて病室に入ると、NSTの最中だった。
心拍数は130前後で安定。
陣痛レベルもほとんど0に近い。
安定しているようで安心した。
冗談を言って笑わせるとお腹に力が入るからか、陣痛レベルが上がる。
それが面白くて何度も笑わせていたら
「これ、スタッフステーションでも見てるんだから、怒られた
らどーすんのよ。」と言われた。
「じゃあグラフに『笑い』って書いておこうか。」
と提案したが無視された。
看護士の案内で心エコー室に移動したが、相変わらず私は廊下で待ちぼうけ。
心エコー検査には40分くらいかかった。
エコー終了後、部屋を移り説明を受けた。
今日は里見先生のほか、循環器科の医師1名と看護士が同席であった。
里見先生が説明を始める。
「まず、お子さんは、こちらで医療を受ければ確実に助かるという病気ではないので、そこをよくわかってください。ただ、全力は尽くします。」
「病気の状態からすると、わからないでそのままにしておけば助けられないでしょう。わかっていても肺の状態や心臓の状態によっては生きられない病気です。そのことこをまず了解していただきたい。」
「病気は『三尖弁異形成』です。エプスタイン奇形と類縁の病気です。エプスタイン奇形というのは、三尖弁の付き方の病気ですが、いまお腹の赤ちゃんを見ると、付着はそれほどずれていないません。普通の弁というのは本当に繊細な平らな弁で合わさるのですが、そこが結節状になっていて、合わさっても血液が漏れてしまう。そこから、三尖弁異形成と重症の三尖弁閉鎖不全という病気と言えます。ですから、血液の流れ方自体はエプスタイン奇形と同じですが診断名は『三尖弁異形成』と『重症三尖弁閉鎖不全』ということになります。」
「右心房と右心室の間で非常に多くの血液が行ったり来たりしているため、本来なら右心室か
ら肺動脈に流れる前方流というものがなく、右房に逆流してしまっています。肺動脈の弁は開いていませんでした。」
「しかし、肺動脈の中には血流がないのではなくて、本来は肺動脈から動脈管に血液が流れるのが正常な胎児の流れですが、そこを逆に動脈管から肺動脈に血液が流れていました。このまま生まれたらどういうふうに流れるかというと、上半身と下半身から右心房に血液が戻ると、それが右心室に入るのですが、それが肺動脈に流れるのではなく右心房に戻ってしまいます。それがまた右心室に入って、また右心房に戻る。このように右心房と右心室の間を行ったり来たりしています。ですから右心房に余計に負荷
がかかって右心房が拡大してしまっています。」
「右心房がこんなに大きくなっているということは、右心房の心臓の壁も紙のようにぺらぺらに薄くなってしまっているはずです。」
「肺動脈の弁が今見たところでは閉じています。弁が閉じているということは、右心室が血液を送り出すだけの力がないという機能的閉鎖と、弁がくっついてしまっているという解剖学的閉鎖の二つの意味があります。しかし、今見たところそのどちかは分かりません。胎児というのは、お腹の中にいる間は、弁が開かないというような状態が続くと弁がくっついてしまいます。最初は機能的閉鎖でもそれが続いているうちに弁がくっついてしまって解剖学的閉鎖になってしまうということがあります。今はそのどちらかは分かりませんが、いずれにしろ流れはありません。」
「では、この状況では生きられないかというと、そういうことではありません。肺動脈を通る以外の血液の道というのは、右心房から心房中隔を通って左心房を経由して左心室から全身
に送り出されます。今はこういう血液の流れがあります。でも、このままでは生きられない。酸素がないからです。そこで、今拝見すると動脈管というのは開いていますので、ブルーの血液は大動脈から動脈管を通って肺の方に流れる。そして、肺に流れれば肺で酸素を取り込んで酸素を含んだ赤い血液が身体に流れることになります。」
「このとき問題となるのは、肺が酸素をくっつける能力があるかどうか、換気能力があるかどうかです。これは今私たちには何もやってあげられることができません。ですから、これはもう今の時代ですと運命みたいなものです。右心房が大きくなったために肺が圧迫されているわけですが、どこまで肺胞が成熟しているか、酸素をくっつける機能を身につけているかというのは、今はわかりません。ただ、肺の面
積が少ないというのは、心臓の面積が大きいから肺が圧迫されて面積が小さいわけですけど、今日みたところで(CTARは)56%くらいでした。この前が 61%でした。その差はほとんどなくて数値上5%くらい小さくなっていますが、5%という数字は、誤差程度と思ってください。ですから、この前と比べて変わらな
いくらい、この前と比べて少なくともひどくはなっていないということ、それから70%を超えた人でも換気能力を持っている人がいたということからすれば、あきらめるという材料にはならないと思います。」
「ただ、換気能力があるかどうかということは、生まれて『おぎゃー』と泣いて、それで大人の血液の流れになったときに赤い血流ができてくるかどうかが重要になってきます。それは酸素飽和度をみればい
いということになります。それでもし酸素を取り込むことができないということになれば、ちょっと無理かもしれません。」
「新生児の治療としては、そういう未熟な子供でも酸素を取り込むことができるようないろいろな治療がありますが、肺そのものが未熟で酸素を取り込むことができないということになればちょっと厳しいかもしれません。」
「普通の赤ちゃんは、『おぎゃー』と泣けばまっかっかになりますが、このお子さんの場合は、このブルーの血流があるわけですからチアノーゼがあることになります。ですから『おぎゃー』と泣けば紫色が出ることになります。しかし、これは当然のことで驚くことではありません。」
「まず、『おぎゃー』と生まれて、肺が酸素をくっつける能力があるという状況があった上で、治療をやりましょうかどうしましょうかという話になるわけです。ここで、生きるためには動脈管が必要です。動脈管を介して肺に行く血流が保たれているわけですから、普通の赤ちゃんのように生まれて数時間で動脈管が閉じてしまったということになれば肺に行く血流がなくなることになります。ということは赤い血流がまったくできなくなってしまうということで、真っ黒けになって生きれなくなってしまということです。」
「生まれてすぐは動脈管が開いてますから、そこで、肺がちゃんと酸素をくっつける能力があるかどうかを確認して、そして、この動脈管を閉じないように維持をするというのが大事です。最初にその処置をやれば、おそらくこの血液の流れを維持することは可能です。ただ、この血液の流れ方を何ヶ月も何年
もそのままにするというのは不可能です。動脈管というのは必ず閉じてきます。動脈管を閉じなくするプロスタグランディンという薬がありますが、これは長いこと使えるものではありません。ということは、この動脈管を開く短期的な治療をしている間に次のことを考えなければ最終的にいきつくところまで行
けないということになります。最終的な目標はこの前お話ししましたがフォンタン手術です。その前に、スターンズ手術というのがあります。スターンズ手術というのは、生まれてきたときに発症している非常に重いエプスタイン奇形に対して初めて考え出された手術です。スターンズというのは人の名前です。1991年に初めて発表された手術です。この手術の要点はなにかと言うと、心房がばかでかくて肺を圧迫しています。これをまず縫縮といって余分なところを切り取って縮めてしまいます。これがまずひとつ。それから、三尖弁のところでは血液が行ったり来たりでエネルギーを無駄にしているわけですから、この部分の無駄をなくすためにふたをします。そして、余分なところを切り取って、縫い縮めるという手術をやる。そうすると、静脈の血は一応右心房に入ってきます。行ったり来たりの無駄がなくなって右心房も小さくなったわけですから、その血液がどこにとになるかというと、心房中隔しかないわけです。そこで、心房中隔を大きく開けてあげるわけです。そこを通った血液は左心室のポン
プで全身に送り出されます。これで一応血圧は出せるわけですが、これではまだ生きられない。赤い血液がないからです。」
「この場合、動脈管があればいいのですが、動脈管はいつまでもそのままにしておくわけにはいかない。そうすると動脈管に代わるものとして、左の手に行く動脈から人工血管を肺動脈につないでやります。そうすると肺に流れた分は酸素を取り込んで左心房に戻ってくる。そうすると、これでチアノーゼはあるけれども生きていける。これがスターンズ手術です。こういうことをやって、最初の段階で無駄をしていたこの部分をまず修復してしまう。そして動脈管というのは不安定でいつまでもこのままの状態でおくわけにはいかないので手術で結索をしてしまって、左腕に行く動脈と肺動脈を人工血管でつないでやります。」
「この手術をすれば永久にこれで生きていけるかというと、これもそういうわけにもいかない。このままではまだチアノーゼが残っています。ですから、この段階でももちろん何もしないよりはいいですが、チアノーゼは残っているということと、人工血管は4ミリくらいのものを使いますが、永久に開くということがなく、だいたい2年くらいたつと70%くらいの人が閉じてしまいます。ですから、それまでの間になにかをやらなければいけない。フォンタン手術というのは、3歳以上、できればもうちょっと待ってやりたい。そうすると、こちらは3年も4年も待っていられない。人工血管が閉じてしまう
からです。そうすると、途中にひとつ、こういう手術をおくというのが最近の手術のやりかたです。上大静脈を切って肺動脈に繋ぐ。そうするとあとは、切った肺動脈の断端を縛ってしまいます。それから肺動脈も縛って縫い込んでいます。それから、このいずれ狭くなって閉じてしまうかもしれない人工血管も切り離してしまいます。そうすると、今度は頭の方から来る静脈の血は直接肺に行きます。肺に行った分は酸素化されて戻ってきます。この赤い血液は左心室のポンプで全身に送り出されます。ただ、下半身か
らの静脈の血液はそのまま右心房に戻ってきます。そうすると、その血液は心房中隔をすり抜けてこう回って、やはり青と赤が混ざってチアノーゼはあります。この状態まで持って行けば、半分フォンタンにしたようなものですから、上半身の血液は直接肺に流れる。そして、下半身の血液は直接心房に流れる。
その結果として生きられるということになるわけです。そうすると、肺に対しても準備期間にもなるわけです。その次は、下大静脈です。下大静脈も切り離して人工血管で肺動脈に繋ぐわけです。その半分だけこっちから流すわけですから、フォンタンの準備手術みたいなものです。そういう意味で、この手術をいったんおいて、それから最終的にフォンタン手術に行く、というのが今のだいたいの施設でやっている手術です。」(つづく)
【出産予定日まであと36日】
豊科駅から病院までは3.2キロという案内であったので、試しに歩いてみた。
歩き始めてから気づいたのだが、歩行者が全然いない。
病院に着くまでに見た歩行者は、孫を散歩させているおばあちゃんだけであった。
移動手段に徒歩を使う人はいないようだ。(どこに行くにも遠いからか)
病院に着いて病室に入ると、NSTの最中だった。
心拍数は130前後で安定。
陣痛レベルもほとんど0に近い。
安定しているようで安心した。
冗談を言って笑わせるとお腹に力が入るからか、陣痛レベルが上がる。
それが面白くて何度も笑わせていたら
「これ、スタッフステーションでも見てるんだから、怒られた
らどーすんのよ。」と言われた。
「じゃあグラフに『笑い』って書いておこうか。」
と提案したが無視された。
看護士の案内で心エコー室に移動したが、相変わらず私は廊下で待ちぼうけ。
心エコー検査には40分くらいかかった。
エコー終了後、部屋を移り説明を受けた。
今日は里見先生のほか、循環器科の医師1名と看護士が同席であった。
里見先生が説明を始める。
「まず、お子さんは、こちらで医療を受ければ確実に助かるという病気ではないので、そこをよくわかってください。ただ、全力は尽くします。」
「病気の状態からすると、わからないでそのままにしておけば助けられないでしょう。わかっていても肺の状態や心臓の状態によっては生きられない病気です。そのことこをまず了解していただきたい。」
「病気は『三尖弁異形成』です。エプスタイン奇形と類縁の病気です。エプスタイン奇形というのは、三尖弁の付き方の病気ですが、いまお腹の赤ちゃんを見ると、付着はそれほどずれていないません。普通の弁というのは本当に繊細な平らな弁で合わさるのですが、そこが結節状になっていて、合わさっても血液が漏れてしまう。そこから、三尖弁異形成と重症の三尖弁閉鎖不全という病気と言えます。ですから、血液の流れ方自体はエプスタイン奇形と同じですが診断名は『三尖弁異形成』と『重症三尖弁閉鎖不全』ということになります。」
「右心房と右心室の間で非常に多くの血液が行ったり来たりしているため、本来なら右心室か
ら肺動脈に流れる前方流というものがなく、右房に逆流してしまっています。肺動脈の弁は開いていませんでした。」
「しかし、肺動脈の中には血流がないのではなくて、本来は肺動脈から動脈管に血液が流れるのが正常な胎児の流れですが、そこを逆に動脈管から肺動脈に血液が流れていました。このまま生まれたらどういうふうに流れるかというと、上半身と下半身から右心房に血液が戻ると、それが右心室に入るのですが、それが肺動脈に流れるのではなく右心房に戻ってしまいます。それがまた右心室に入って、また右心房に戻る。このように右心房と右心室の間を行ったり来たりしています。ですから右心房に余計に負荷
がかかって右心房が拡大してしまっています。」
「右心房がこんなに大きくなっているということは、右心房の心臓の壁も紙のようにぺらぺらに薄くなってしまっているはずです。」
「肺動脈の弁が今見たところでは閉じています。弁が閉じているということは、右心室が血液を送り出すだけの力がないという機能的閉鎖と、弁がくっついてしまっているという解剖学的閉鎖の二つの意味があります。しかし、今見たところそのどちかは分かりません。胎児というのは、お腹の中にいる間は、弁が開かないというような状態が続くと弁がくっついてしまいます。最初は機能的閉鎖でもそれが続いているうちに弁がくっついてしまって解剖学的閉鎖になってしまうということがあります。今はそのどちらかは分かりませんが、いずれにしろ流れはありません。」
「では、この状況では生きられないかというと、そういうことではありません。肺動脈を通る以外の血液の道というのは、右心房から心房中隔を通って左心房を経由して左心室から全身
に送り出されます。今はこういう血液の流れがあります。でも、このままでは生きられない。酸素がないからです。そこで、今拝見すると動脈管というのは開いていますので、ブルーの血液は大動脈から動脈管を通って肺の方に流れる。そして、肺に流れれば肺で酸素を取り込んで酸素を含んだ赤い血液が身体に流れることになります。」
「このとき問題となるのは、肺が酸素をくっつける能力があるかどうか、換気能力があるかどうかです。これは今私たちには何もやってあげられることができません。ですから、これはもう今の時代ですと運命みたいなものです。右心房が大きくなったために肺が圧迫されているわけですが、どこまで肺胞が成熟しているか、酸素をくっつける機能を身につけているかというのは、今はわかりません。ただ、肺の面
積が少ないというのは、心臓の面積が大きいから肺が圧迫されて面積が小さいわけですけど、今日みたところで(CTARは)56%くらいでした。この前が 61%でした。その差はほとんどなくて数値上5%くらい小さくなっていますが、5%という数字は、誤差程度と思ってください。ですから、この前と比べて変わらな
いくらい、この前と比べて少なくともひどくはなっていないということ、それから70%を超えた人でも換気能力を持っている人がいたということからすれば、あきらめるという材料にはならないと思います。」
「ただ、換気能力があるかどうかということは、生まれて『おぎゃー』と泣いて、それで大人の血液の流れになったときに赤い血流ができてくるかどうかが重要になってきます。それは酸素飽和度をみればい
いということになります。それでもし酸素を取り込むことができないということになれば、ちょっと無理かもしれません。」
「新生児の治療としては、そういう未熟な子供でも酸素を取り込むことができるようないろいろな治療がありますが、肺そのものが未熟で酸素を取り込むことができないということになればちょっと厳しいかもしれません。」
「普通の赤ちゃんは、『おぎゃー』と泣けばまっかっかになりますが、このお子さんの場合は、このブルーの血流があるわけですからチアノーゼがあることになります。ですから『おぎゃー』と泣けば紫色が出ることになります。しかし、これは当然のことで驚くことではありません。」
「まず、『おぎゃー』と生まれて、肺が酸素をくっつける能力があるという状況があった上で、治療をやりましょうかどうしましょうかという話になるわけです。ここで、生きるためには動脈管が必要です。動脈管を介して肺に行く血流が保たれているわけですから、普通の赤ちゃんのように生まれて数時間で動脈管が閉じてしまったということになれば肺に行く血流がなくなることになります。ということは赤い血流がまったくできなくなってしまうということで、真っ黒けになって生きれなくなってしまということです。」
「生まれてすぐは動脈管が開いてますから、そこで、肺がちゃんと酸素をくっつける能力があるかどうかを確認して、そして、この動脈管を閉じないように維持をするというのが大事です。最初にその処置をやれば、おそらくこの血液の流れを維持することは可能です。ただ、この血液の流れ方を何ヶ月も何年
もそのままにするというのは不可能です。動脈管というのは必ず閉じてきます。動脈管を閉じなくするプロスタグランディンという薬がありますが、これは長いこと使えるものではありません。ということは、この動脈管を開く短期的な治療をしている間に次のことを考えなければ最終的にいきつくところまで行
けないということになります。最終的な目標はこの前お話ししましたがフォンタン手術です。その前に、スターンズ手術というのがあります。スターンズ手術というのは、生まれてきたときに発症している非常に重いエプスタイン奇形に対して初めて考え出された手術です。スターンズというのは人の名前です。1991年に初めて発表された手術です。この手術の要点はなにかと言うと、心房がばかでかくて肺を圧迫しています。これをまず縫縮といって余分なところを切り取って縮めてしまいます。これがまずひとつ。それから、三尖弁のところでは血液が行ったり来たりでエネルギーを無駄にしているわけですから、この部分の無駄をなくすためにふたをします。そして、余分なところを切り取って、縫い縮めるという手術をやる。そうすると、静脈の血は一応右心房に入ってきます。行ったり来たりの無駄がなくなって右心房も小さくなったわけですから、その血液がどこにとになるかというと、心房中隔しかないわけです。そこで、心房中隔を大きく開けてあげるわけです。そこを通った血液は左心室のポン
プで全身に送り出されます。これで一応血圧は出せるわけですが、これではまだ生きられない。赤い血液がないからです。」
「この場合、動脈管があればいいのですが、動脈管はいつまでもそのままにしておくわけにはいかない。そうすると動脈管に代わるものとして、左の手に行く動脈から人工血管を肺動脈につないでやります。そうすると肺に流れた分は酸素を取り込んで左心房に戻ってくる。そうすると、これでチアノーゼはあるけれども生きていける。これがスターンズ手術です。こういうことをやって、最初の段階で無駄をしていたこの部分をまず修復してしまう。そして動脈管というのは不安定でいつまでもこのままの状態でおくわけにはいかないので手術で結索をしてしまって、左腕に行く動脈と肺動脈を人工血管でつないでやります。」
「この手術をすれば永久にこれで生きていけるかというと、これもそういうわけにもいかない。このままではまだチアノーゼが残っています。ですから、この段階でももちろん何もしないよりはいいですが、チアノーゼは残っているということと、人工血管は4ミリくらいのものを使いますが、永久に開くということがなく、だいたい2年くらいたつと70%くらいの人が閉じてしまいます。ですから、それまでの間になにかをやらなければいけない。フォンタン手術というのは、3歳以上、できればもうちょっと待ってやりたい。そうすると、こちらは3年も4年も待っていられない。人工血管が閉じてしまう
からです。そうすると、途中にひとつ、こういう手術をおくというのが最近の手術のやりかたです。上大静脈を切って肺動脈に繋ぐ。そうするとあとは、切った肺動脈の断端を縛ってしまいます。それから肺動脈も縛って縫い込んでいます。それから、このいずれ狭くなって閉じてしまうかもしれない人工血管も切り離してしまいます。そうすると、今度は頭の方から来る静脈の血は直接肺に行きます。肺に行った分は酸素化されて戻ってきます。この赤い血液は左心室のポンプで全身に送り出されます。ただ、下半身か
らの静脈の血液はそのまま右心房に戻ってきます。そうすると、その血液は心房中隔をすり抜けてこう回って、やはり青と赤が混ざってチアノーゼはあります。この状態まで持って行けば、半分フォンタンにしたようなものですから、上半身の血液は直接肺に流れる。そして、下半身の血液は直接心房に流れる。
その結果として生きられるということになるわけです。そうすると、肺に対しても準備期間にもなるわけです。その次は、下大静脈です。下大静脈も切り離して人工血管で肺動脈に繋ぐわけです。その半分だけこっちから流すわけですから、フォンタンの準備手術みたいなものです。そういう意味で、この手術をいったんおいて、それから最終的にフォンタン手術に行く、というのが今のだいたいの施設でやっている手術です。」(つづく)
【出産予定日まであと36日】
by useradd
| 2005-10-21 23:02
| 杏優の病気